本誌「C.C.C.」内で、様々な作家さんにキャラクター論について語っていただくコーナーが「キャラクター作りの神髄」!
HPでは、その取材模様の全文を公表します!
Vol.14:柴なつみ先生
- ケンケン(以下、K) 最初に『てんちょう、ダメ、絶対』の発想の原点を教えていただければと思います。
- 柴なつみ先生(以下、柴) 「素敵なおじさまとの恋愛が描きたい!」と思ったのがきっかけです。
- そこからなんですね(笑)
- まあ、若い男キャラばかり描いていたのもあり、やったことないものにチャレンジしたかったんですよ。
自分もダンディなおじさまが好きだったし、女子大生とおじさまの恋愛ってロマンチックじゃないでしょうか? - チャレンジ精神ですか。
- おじさまキャラをピチピチのイケメンが多い少女漫画の中で目立つかなと思いましたね。実際やってみて最初は大人の恋愛を描こうと背伸びしてしまったり、かなり苦戦したのですが。
- てんちょう君はかなりインパクトのあるキャラですが、キャラが生まれた時のことを教えてください。
- 「おじさまがどういう思考回路で恋愛するのか想像できない、少年だったら描けるのに…」と悩んでいたら、担当さん(ケンケン)が「じゃあ、このおじさまも少年にしましょう」と破天荒なアドバイスをして下さいました。「周りのおじさまにインタビューしてみましょう」とかじゃないんだ!?プロは普通じゃダメなんだ!と謎のショックを受けました。
- 柴さん自身もおじさまが好きなんですよね。
- そうなんです。おじさま好きな七森のおじさまトークは本気度が伝わらないと楽しくないので、自分がいつも本当に思っていることを語らせるようにしました。作画も、お気に入りのイケオジ雑誌を読んで、スーツのデザインを参考にしたり…。おじさまの魅力、届け!という気持ちで描きました。
- おじさまの魅力、届け。
好きなものだと力が入りますね。てんちょう君を生み出し、描いてみてどうですか? - 最初は設定自体、インパクトあるので、これはビックリするだろうと思ってスラスラ描けたんですよ。
- 最初はスラスラですが、てんちょうは描き続けてみてどうでした?
- 1話目では「思春期男子」というイメージしかなくて。2話くらいから「思ったより常識人だな」とか、「あらこんなお茶目なところあるのね」とか…息子の性格を知っていく母親のような気分でした。せっかく発見した長所は読者にも伝えなきゃと思い、セリフや仕草にも性格がでるようにしました。高倉健さんのように「○○ですから…」と不器用に喋らせてみたり、座る時は正座だったり。…話の本筋とは関係ない動作が多いです。
- たしかに柴さんって仕草とかちょっとした動作にこだわりがありますよね。
- 私が読者として読んでいるとき、意図していないような小さなコマや何気ない仕草などの胸キュンにグッとくるので、自分もそういうの描きたいな~と思ってるんです。もちろん、そういうのばかりじゃなく、王道な胸キュンシーンも描けるようになりたいですが。
- では主人公の七森のキャラはどのように生まれたんですか?
- 先にてんちょうの奇抜なキャラができてしまったので、この人と恋愛できるのはどんな女子だろうと、組み合わせでひたすら悩みました。おじさま好きヒロインという設定以外がぼんやりしてて…。私はキャラの性格がつかめない時はとにかく見た目を変えるので、目の形、ファッション、髪色をコロコロ変えてみました。
- なるほど! キャラは見た目も重要な要素ですね。
- 結果「美人な黒髪お姉さん」がてんちょうともお似合いで、性格のギャップもあって面白かったので、七森は髪型でキャラが決まったような感じです。
- 作者から見て、七森はどんな魅力のある人間ですか?
- 変態だけど優しい子だなと思います。ちょっとクセのある女子だからこそ、ダメな自分を反省するとか、憎めない部分を作るように意識しました。これは七森以外のキャラでも、なんならデビュー作からずっと気をつけている部分な気がします。変なキャラ多いので…。
- なぜそこを意識するのでしょうか?
- 投稿者の頃から変わったキャラが描けることを褒めてもらえていたので、そこを大事にしたかったのですが、ぶっとんだキャラって共感しづらかったり、ついて行けなかったりしますよね。単なる変なキャラにならないようバランスを考えて意識しています。
- なるほど。たしかに柴さんの描くキャラは面白い設定・性格が多いですね。
- 少女漫画と同じくらい少年漫画が好きで昔から、うすた京介先生の『すごいよ?マサルさん!』や『ピューと吹く!ジャガー』みたいに、存在するだけで面白いような個性のあるキャラを描きたいなっていう憧れがありました。少女漫画のときめきと少年漫画のようなキャラの個性を両立させたいんですよね。
- ちなみに作中で気に入っているキャラは?
- 七森父です。友人が「小さいおじさんの可愛さに目覚めた」と言ってくれたからです(笑)。
- では次にストーリーはどのように考えていくのでしょうか?
- てんちょう君がどこで何をしたら面白いか、から考えますね。あくまで、てんちょうというキャラクターからです。
- たとえばどんなことでしょう?
- てんちょう君が学校ではどんな感じだろう、クラスメイトに誤解されてたら面白いんじゃないか、海で遊んだらどんな感じか~とかですね。『てんちょう』の打ち合わせは大喜利大会みたいで楽しかったです(笑)。
担当さんとどっちが面白いことを思いつくかみたいな感じで「これだ!」というのが採用されていったので(笑)。 - 大喜利大会(笑)。たしかに楽しい打ち合わせでしたね。
『てんちょう』のストーリーを考える際、気を付けていること、意識しているところはどんなことですか? - 本筋は恋愛ストーリーなんだと忘れないように…。ギャグが多いからこそ感情の流れというか、七森のモノローグを大事にしなきゃと思ってました。
- 『てんちょう』は今回で無事に最終話を迎え完結しましたが、どんなお気持ちですか?
- とにかく初めての事だらけで、何もかも勉強になりました。
超しんどかったけど超楽しかった!という…部活の合宿後みたいな気持ちです。 - 『てんちょう』のラストシーンというのは当初からイメージがあったのでしょうか?
- 全くないです。「てんちょうの冒険はこれからだ!」みたいなふざけたラストを考えてました。読者様が想像以上に二人の恋愛を応援して下さったので路線変更しました。
- 柴さんは「クッキー・コミック・チャレンジ」でデビューし、そこから連載作家になったわけですが、デビュー前と今とで変わったこと(プロになって意識したこと)を教えてください。
- デビュー前は学生だったので「お金いっぱい欲しい」とか最低なことしか頭になかったですが、今は「読者はどんな漫画が読みたいんだろう」と真剣に考えるようになりました。超成長です。
- 超成長ですね。でもガツガツしてて良いですね(笑)。
- 漫画で当ててやる! 賭けに出なきゃ!って思ってました(笑)。
- 新人や投稿者で話が作れず悩んでいる方にアドバイスはありますか?
- 分かる…。私も起承転結の「起」が一番好きなので、6ページくらいで飽きちゃうことが多くて、そういう時は無理矢理にでも自分のフェチを見つけるようにしてます。世間に言いたい事や立派なテーマが無くても、「このメガネ男子が八重歯を見せて笑うシーンを描かずに死ねるか」みたいな、萌えで1作描きあげてもいいと思います。コマ割りとか難しいことは後で調整すればいいので、「これ描く為に頑張るぞ!」っていうご褒美シーンを探しましょう!
- ご褒美シーンいいですね!柴さん自身がネームを描いていて上手くいかない時はどんな時ですか?
- 設定とストーリーだけで描き始めると中身がスカスカのものになりがちです。だから途中からでもキャラを固めるようにしますね。
- キャラが上手くいかない時は?
- キャラを自分の中から出し過ぎている時とかは性格の要素が散らばり過ぎていて上手くいかないことが多いです。担当さんにどういうキャラが言われても、自信を持ってこういうキャラですって上手く言えない時も、上手くいかない時にありがち。そんな時は引き算だ大事です。性格の要素が3つあったら1つに絞るとか。
- 複雑すぎても分かりにくいので、シンプルにすることが大事ということですね。では次回作、期待しております!