本誌「C.C.C.」内で、様々な作家さんにキャラクター論について語っていただくコーナーが「キャラクター作りの神髄」!
HPでは、その取材模様の全文を公表します!
Vol.09:優木なち先生
- ケンケン(以下、K):今月からクッキーで新章の『僕の家においでWedding』を始める優木先生にキャラ作りについて聞いていこうと思います。
『僕の家においで』という漫画は、どうやって出来たのですか? - 優木先生(以下、優):最初はキャラとは関係ないところから作りました。まず同居モノをやりたいというのがあり、自分の趣味を詰め込んだのです。
- 自分の趣味というと?
- 私の好きなタイプの男のキャラと、それに拾われるというシチュエーション、好きすぎて心配になってしまうところ等ですね…!
- 本当に自分の趣味ですね(笑)
ではそのヒーローの真野さんというキャラはどうやって作ったのですか? - 作るどころか何も考えずに見た目も内面も理想を詰め込んだだけなんです。まず髪の毛は長くはなくて短く、高校生より大学生。性格は穏やかで…彼女のことが好き過ぎてヤキモチ妬きで、バイクが乗れるっていう。
- すごい! いっぱい出てきた。
- でも、描きたい男の子キャラとシチュエーションは決まっていたのですが、主人公のキャラが立っていなくてネームが中々通らなかったんですね。
- 主人公の美玲はどのようにキャラが立っていったのですか?
- 初めはただ突っ走るだけの勝気なキャラだったのですが、それではついていけないと言われ…真野さんに合う人はどんな子かなと考えたんです。彼の家に拾われるってことは貧乏かな。貧乏ならネガティブかな。でもただネガティブで暗いと読者に好かれないから、面白く笑えるような子にしようと。
- それで出来たのが美玲ですね。キャラを掴んだ瞬間は?
- 真野さんに「人工呼吸して」と言われた時に美玲が「私、歯磨きは歯磨き粉なしで磨いているので、お口の中の清潔感が若干足りないかもですが…!」と返すエピソードを描いたときです! こういう時にどんなことをするか、すぐ想像がつくようになりました。
- あのセリフはインパクトありましたね。こんなことを言うヒロインがいるんだって思って笑えました。確かにこの子ならこういう時にこう動くっていうのが読者も想像ができますね。
- 貧乏でネガティブで、でも面白い子という性格が揃った瞬間だと思います。
- では次はもっとざっくりした質問。
優木先生が少女マンガのヒロインを描く時に大事にしていることを教えてください。 - やっぱり自分がそのキャラに好感を持てることだと思います。たとえば私はギャルだったことがないのでギャルは描けません。無理をせず自分と近いところがある子を描くこと。かつ、読者に共感・感情移入してもらえて好きになってもらえる子を描くことだと思います。
- 好きになってもらうコツって何なのでしょうか?
- 誰もが「わかる」って思えるような、誰もが一度は悩んだことがあるような悩みを持っていたり(共感)、この子って面白いな可笑しいなとクスクス笑えるような子だったり(身近)、この子は頑張ってるなと思えるような子だと思います。
私も自身、キャラを好きになる時はそういう時なので。 - では次にヒーローキャラを描く時に意識することはどんなことですか?
- 前は読者にウケて、カッコよさにインパクトがあることを意識していたのですが…。
- ちなみに読者にウケる男の子というのは?
- 『りぼん』だとクラスの中心にいるような明るくて冗談も言えて…みたいな人ですね。
- ああ~一度はみんなが好きになるような!
- なのですが、段々とそういうキャラよりも
実際にいて自分が良いなと思う人の方が描きやすくなってきて。 - 作者自身の気持ちや趣味も変わってきますからね。
- はい。なので、現実にいた時に、自分もカッコいいと思えるかですね。あとはヒーローを立たせるためにキーワードを入れます。「狼に育てられた」とか「国宝級」とか。
- あると無いとではインパクトが違いますね…!
狼に育てられた天然男子が活躍する優木先生のちょっとHな連載『ボクは狼。』も
キャラが立っていて面白かったです。 - 『ボクは狼。』は男の子のキャラは読者に人気だったのですが、
主人公はあんまり好きっていう人を聞かなかったんですよ(笑)。
主人公が「スケベな男子が嫌い」っていう設定だけで出来たキャラなので、
私が共感できる要素がなくて…それだとやっぱり主人公を好きにはなれないですね。 - なるほど。長く描くためには作者自身が主人公を好きでいることも大切かもしれませんね。
他に、『僕の家においで』を描いたことでの発見はありました? - 私としては…真野さんは最初のボツネームの時とOKになったネームとで、
まったく同じキャラを描いていたつもりなのですが、
OKになったネームでは担当さんに「真野さんのキャラが際立ったね」と言われました。
これは美玲のキャラが立ったことによってそうなったんですね。
キラキラな真野さんというキャラと対照的な
貧乏でネガティブな美玲がお互いを際立たせたというか。
あとは、美玲目線で「真野さんカッコいい」という気持ちに
入れるようになったのがあると思います。
なので、作者の中では出来ているはずのキャラが
主人公次第で見え方が変わってくるなと思います。 - なるほど深いですね。ちなみに『僕の家においで』をりぼんで連載を始めた時、
ゴールは決めていたのですか? - 真野さんに「結婚しよう」とプロポーズされるというラストは決めていました。
でもまずは「なんで真野さんは私を拾ってくれたのだろう」という疑問を軸に物語を展開させていきましたね。 - 今回、クッキーで始まった『僕の家においで Wedding』におけるお話の軸は?
- クッキーでの新章は結婚してからのスタートなので、結婚後の永遠の愛とは何かをテーマに、夫婦生活の中でのトラブルや嬉しいこと、幸せを描きながら2人の成長を描いていきたいと思います。
でも…私の漫画ってクッキーの他の先生方のようなリアルで素敵な漫画と違って、
漫画っぽい漫画ので、読者の皆様にちゃんと楽しんでもらえるか心配です…。 - 心配性でネガティブなところが主人公の美玲と少し被りますね(笑)。
でもそこは読者を思い切り楽しませるつもりでいきましょう…! - はい。私も楽しんで皆さんにも楽しんでもらいたいです。