マンガ投稿C.C.C.

キャラクター作りの神髄

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本誌「C.C.C.」内で、様々な作家さんにキャラクター論について語っていただくコーナーが「キャラクター作りの神髄」!
HPでは、その取材模様の全文を公表します!

Vol.05:Maria先生

編集ケンケン(以下、K) Maria先生は、デビュー以来、
数々の作品を発表して来られましたけれども、
昔と今とでは、話作りやキャラ作りで変わったことはありますか?
Maria(以下、M) 一番ガラッと意識が変わったのは、デビューした後、すぐですね。
投稿者の頃は、本当に好き勝手に描かせてもらっていたんですが、
デビューした後、担当さんに「こんな感じの男の子を出して」って、
当時、流行ってた俳優をモデルに提案されたんです。
担当から「こういう話、こういうキャラはどう?」っていう提案は、よくあることですもんね。
でも、私はその時、「あ~その人はそんなに好きじゃないんです」って言って断ったんですよ。
そしたら、「プロなんだから自分が好きかどうかは関係ない。それはプロ意識が欠けている。読者が読んでみたいかもしれないものに挑戦せず、自分の描きたいものだけを描くのか」と怒られたんです。
あ~確かにそうだなと思って、そこからは、自分の好きじゃないものにも目を向けて、流行っている人とか人気なものを取り入れるようになりました。
それはそれで世界が広がるわけですし、良いことですよね。
担当の言ったことを取りあえずは受け入れてみると、また描けるものの幅が増える気がします。

自分の好きなものと読者の好きなものは、違うことを認める

実際に、自分の好きなキャラと読者の好きなキャラも、違いますからね。
Mariaさんはどんなキャラが好きなんですか?
私自身は、『こっちにおいでよ。』の宮司さんのような…大人な人が好きなのですが、
アシスタントさんやファンレターの反応を見ると、私とは好みが違いますね。本当にバラバラだったりします。
となると、やはり自分の好きなものだけを描いていては勿体無いですよね。
でも、実際、自分好きなキャラと読者の好きなキャラが別々だった時ってどんな気持ちなんですか?
それは嬉しいですよ。「この人好き」「この人嫌い」も両方嬉しいです。
それぞれに思い入れを持って描いているので。
嫌いっていうのも、それだけ意識してもらえてるってことですし。
「自分の好き」と「読者から見た好き」、両方を客観的に見れることもプロとしては大事だと思います。
では、たくさんの作品を描かれてきたMaria先生の経験上、
読者に好かれるキャラってどんな人なのでしょうか?
万人に好かれるキャラで言えば、男の子は、主人公を愛してくれるひたむきなキャラですね。味方してくれる人。
あとは、素直な子ですね。毒があっても、口が悪かったり、サバサバしてても、
自分の気持ちに素直な子が良いと思います。
素直な子だと応援したくなりますね。「うじうじ悩んでるばかり」とか
「素直になれなくて悪態ばかり」とかだと、何だよこいつ!ってなっちゃいます(笑)。
なので、そこもある程度客観性というか、読者がどう見るか、っていう視点が必要なんだと思います。
そういう意味で、デビューしたての時にそういう風に言ってもらえたのは良かったですね。

Mariaさんはエロを描くけど、エロくないですよね

他に担当さんからの印象的な言葉などはありますか?
あと、デビュー後、かなり経ってなのですが、担当さんの話でひとつ印象的な話がありまして。
「Mariaさんはエロい描写をするけど、エロくないですよね」って言われたんです。
それにはちょっとカチンと来てしまって、「じゃあどんな描写がエロいって言うんですか?」って聞いたら、
あの作家とこの作家と…って言われたので、実際にその作家の作品を読んでみたら「なるほど」と思って、
そこから読み込んで研究しました(笑)。Amazonのレビューとかもしっかり読み込んで…!
すごい勉強熱心ですね…! というか、結果的にカチンとさせた担当が良い仕事をしたんじゃないかと思います。もちろん、Maria先生の素直さ、熱心さあってのことですが。
やっぱり、色んな刺激を外からもらってくるのは大事だなと思いました(笑)。

キャラよりも先に設定とストーリーから作るのがMaria流

では、次にMariaさんのキャラ作りについて聞いていきたいと思います。
まず、何をとっかかりに作るのでしょうか?
私の場合は、設定とストーリーを作りこんでから、キャラを当てはめていきます。
このストーリーに合う見た目、口調、みたいにどんどん肉付けしていくというか。
現在の連載「『未』成熟」の場合はどんな流れだったのでしょうか?
今回の場合、継母との確執&葛藤を描きたいというのが最初にありました。
私自身も、実際に母親とは仲が悪くて…。若い頃はよく衝突もしたのですが、
その後、私自身の中で、母親との関係に一区切りが出来たので、
今回はそこと向き合おうと思ったのです。
かなり自分の実体験というか、実際に感じた気持ちが出発点になっているわけですね。
はい。その上で、やはりエンターテインメントとして恋愛は外せないので、
片思いの相手がいる切なさも入れようと思って、快くんが出来ました。
その後に大倭なのですが、私が実家を出る時に、高校生の妹がいて、一緒に出て行ったという経験がありました。
当時は、母親との確執のために、家の中が険悪だったので、
妹と二人で出て行ったのですが、母親にとっては「妹をそそのかして!」という感じだったので、
その時の感情を元に。妹ではなく、義理の弟という設定にしました。
主人公を好いてくれる義理の弟に…。
上手に実体験とエンターテインメントの両立をされていますね。
実体験を漫画に持ってこようとすると、うまくいかない新人さんや投稿者が多いので、
なるほど目から鱗です。そうやって、ちょっと変えていけば良いんですね。
ありがとうございます(笑)。あと、千暁がキャバ嬢という設定にしたのは、
自分自身も家を出て働いた時、OLをしながら、バーのようなところでアルバイトをしていた時、
酔っ払いの男の人をよく見ることがあったので、その経験を交えて描いています。
すごい! どれもこれも作者の血肉を込めて描いているわけですね。
設定から作るけれども、設定止まりでは終わらないわけです。
作品には、ほぼ私が出ていると思います。『@キラキラバーズ!』で出てくる
魚がさばける男女2人も、私の父が板前で、小さい頃から魚をさばいているのを見ていて
「魚がさばける男の人っていいな~。それが男女だったら面白いだろうな」っていう風に出てきてますから。
それ、すごく参考になると思います。どんな投稿者も新人作家も、みんな違う経験、生い立ちをしているわけだし、
「個性がない」「型にはまっている」っていう風に言われてしまいがちな人ほど、
キャラを作る時に、自分の経験からくる感情などを入れると良いですね。
他に、ヒーロー役の快くんや大倭を描く時に、意識していることはありますか?
快くんは、片思いの切なさを描きたかったので、そこを盛り上げるために、
謎をまとわせるように描いています。「これは計算なの?それとも素なの?」って、
謎が多い方が悩むし、片思いしている時、切ないかなと思ったので。
表情もどっちか分からないようにしていますし、一緒に考えてもらえたらなって思って描いてます。
大倭は、その逆で対照的に、分かりやすい性格で、安心できる存在になればと思って。
すごく色々考えて、狙って描いているということですね。
実際、キャラを作った後は、どのようにネームを描いていくのでしょう?
まずはプロットを描いて、そこからチビネームでセリフを入れて行くのですが
都合によって動いてしまわないように心がけています。
とにかくそのキャラになりきるというか、入り込んで、このキャラはこれは絶対しないよな…とか、
とっさの行動はどんなだろうとか…。何度もネームを描き直してます。
たとえるなら、女優さんが役に入りきるために、色んな役作りをしたり、
「これだ!」ってフィットするまで試行錯誤をする感覚に近いのかな~と思っています。
そのために、何度も自分内でダメ出しをしますね。
まさにキャラを重視してネームを描いているわけですね。
設定やストーリーから作るでも、結果的に読者が見ているのはキャラクターなので、
キャラを最重要視している姿勢はやはりプロのみなさん一緒なんだなと思いました。

プロとは、お金をもらってエンターテインメントを提供すること

他にプロとして意識されていることはありますか?
やっぱり、お金を出して漫画を読んでもらっているわけですし、
読んでもらっている間は、その読者さんの大切な時間をいただいている、
その前提でエンターテインメントを提供するのが仕事だと思っています。
だから、適当なものや、生半可なものは出してはダメだなという意識で、何度も直します。
ちょっとしたセリフ、仕草も、どれがベストだろう、どれが一番面白いんだろうって。
それがネームの向こうにいる読者さんへの誠意かなと。
それに、「うったえたいんだ」ってものが無いと、描く意味がないんじゃないかなと思います。
いっぱい漫画家さんがいますから、他の人と差をつけなきゃいけない。
差が出るのは、人の心に刺さるかどうかですよね。
自分の存在する意味を見出すような作品を描くように心がけていきたいと思っています。
すごくアツいです。でも、まだそこの境地にたどり着く前で足踏みしている方にアドバイスがほしいのですが…。
たとえば投稿者や新人さんで、なかなかネームを1作完成できないっていう人もいますよね。
途中で「面白くないかも…」ってなっちゃうと熱が冷めちゃって、途中までになってしまうとか。
そこは精神論になってしまうのですが、それを乗り越えることが出来ない人は、
漫画家には、なれないと思います。私にもそういう時期がありました。
でも、完成できないのは甘えだなと今では思います。
それなら、面白くなくても良いから、まずは1作、描ききること。それが最初の壁だと思います。
そうですね。みなさん、そこを何とか乗り越えてほしいと思います。
投稿者のみなさん、ぜひ、参考に良い作品を仕上げてほしいと思います。
Maria先生、ありがとうございました。

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