マンガ投稿C.C.C.

キャラクター作りの神髄

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本誌「C.C.C.」内で、様々な作家さんにキャラクター論について語っていただくコーナーが「キャラクター作りの神髄」!
HPでは、その取材模様の全文を公表します!

Vol.06:斉藤倫先生

編集ケンケン(以下、K) 現在、『路地裏しっぽ診療所』を連載中の斉藤倫先生にお話を伺いたいと思います。
この作品は、動物の医療や、虐待などの社会問題にも触れる作品なので、取材が必須ですよね。
本作がどのように出来ていったのか、教えてください。
斉藤倫(以下、斉) 元々、動物が好きで、小さい頃から犬を飼っていて、小鳥や亀、ザリガニ、昆虫など、たくさんの生き物を飼ってきたんです。
大人になってからは猫を飼い始めて、保護のボランティアをした事があります。
でもずっと動物をテーマにした漫画は描いたことがなかったんです。
数年前にクッキーで連載していた『僕の部屋へおいでよ』で仔猫を拾う話を描いたのですが、描ききれなかった事がたくさんあったので、いつかもっとちゃんとした動物ものを描きたいな~とずっと思っていて…。
今回、連載を立ち上げる時、当時の担当さんも保護動物に興味があったので投合して、このテーマでいこうということになりました。

取材をして漫画を描く時の注意点

なるほど。元々興味のある分野で、テーマから作ったお話だったのですね。
社会性のあるテーマの作品ですし、取材も必要ですから、斉藤さんのように興味を持っていないと描くのが難しいかもしれませんね。
そうですね。興味があることは大事だと思います。
また、テーマや取材から描こうとすると、どうしても情報優先になりがちなので、そこは気をつけた方がいいですね。
取材をすると、どうしても取材した情報を描き入れたくなりますが、そればっかりだと説明漫画ですし、説教っぽくなってしまいますからね。
そうなんです。だから、取材する前に「どんな関係性のドラマを描きたいか」を決めてから、その補強のために取材をするというステップが大事だと思います。
自分の中で、どういう物語を表現したいのかがあり、仮説を立ててから取材で情報を得るということですね。
そうです。描きたいテーマ、流れができて、こういうものが描きたいとイメージしてから、取材をする。
今はネットからも色んな情報や体験談を読むことが出来ますからね。自力でかなり勉強することが出来ます。
その上で、分からないことは獣医さんに聞いたり、間違ってないか確認します。
取材っていうと、身構えてしまう新人さんは多いかもしれませんが、ネットから情報を拾って、実際はどうなのかを獣医さんに確認するという手順なら、ハードルは低そうですね。
まずは自分の手を動かすことからですね。
あと、動物保護の事情を知ってもらいたいと思ってこのテーマを選びましたが、知らない人にも作品を楽しんでもらいたいと思ったので、主人公キャラのなずなは、読者に近い立場で描こうと思いました。
あんまり動物保護や医療のことは分かってないけど、素直で色んな人の立場になって考えられる子で、吸収力がすごい子って感じで。
普通の恋愛モノではなく、読者にとって馴染みがないジャンルを描く場合、そのジャンルに関しては無知なんだけど、読者が入りやすくて吸収力がすごいキャラを主人公にするっていうのは大事な気がしますね。

キャラクター作りは、そのキャラの考え方やイメージ重視

では、二丸先生はどうやって出来たのですか?
もう動物バカってイメージで作りました。
人間や女の子にはそんなに興味なくてとにかく動物のことばかり考えてるような人ですね(笑)。
長い連載にしようと思ったので、キャラ表も作って、好きな食べ物、ちょっとした趣味とかも考えたのですが、そういう細かい設定は、実際はあまり使う事はないですね。
やっぱり、その人が何を持っているかというか、どんな考え方があるのかの方が大事です。
あと、これはあまり生きなかった裏設定なのですが、二丸先生は、動物に好かれたいけど、あんまり好かれないことを気にしていて、動物に近づこうと、髪の毛をボサボサにして、 動物っぽい見た目にしている人なんていうのもありました。
なるほど(笑)。「動物バカ」っていう考え方から膨らませてますね。途中から出てくる、みっくんはどうですか?
途中から出てくるキャラは、そこまで細かく考えてなくてイメージを大事にしています。みっくんはスルッと出てきたイメージで描いてます。子犬のようなキャラってことで。
見た目も性格も可愛い子犬みたいにしました。
でも、実は医学部だったりするとギャップが出ますよね。
可愛い性格だけど、クールないでたちとか。
あんまり考え過ぎると型にはまったキャラになってしまうので、スルッと出てくる「こういう面もある」で作っています。
たしかにキャラ表とかで考え過ぎると、型にはまりがちですよね。
しかし、斉藤さんの「スルッと出てくる」イメージやギャップというのは、もう反射神経というか、長年の勘みたいなもののような気がします(笑)。
それはあるのかもしれません(笑)。

男の子主人公を少女漫画でやる時に気をつけること

それとせっかくなので、男の子主人公についての質問です。
投稿者や新人さんで、男の子を主人公にしたお話を描いてくる方が多いのですが、斉藤さんは別マの連載『世界はみんなボクの為』の中で、男の子主人公を描かれて、長く連載されましたよね。男の子を主人公にするに至った経緯は?
男の子主人公というのは、当時の少女漫画では、わりとご法度だったんですね。
読者は女の子ですし、読者が感情移入しづらいので。
そうですね。今は、男の子主人公の少女漫画ヒット作もあって目立ってはいますが、少女漫画全体の中でいったらかなり珍しく、希少な部類です。
でもまあ、描きたくなるものなんですよね(笑)。
当時、男の子モノの連載がやりたかったんですが、やらせてもらえななくて…。
それで『一億年後の夏の話をしよう』という男の子主人公の読み切りで実績が出せたので、男の子主人公の連載のOKが出たという流れです。
やはり実績が大事ですね。
といっても、男の子主人公なら何でも良いわけじゃなく、男の子を主人公にする意味がないとなんですよね。
「これ、女の子に入れ替えても成り立つじゃん」っていう話じゃなく、男の子じゃないと成り立たない話だったというのもあります。
なるほど。男の子にする意味がないのなら、女の子にしておいた方が良い。
そうです。主人公のキイチは、はちゃめちゃな子で女の子として描くと逆に無理がある子で、男の子らしい感情の子でした。
キイチはモテるの大好き! 女の子大好き! オレを中心に世界が回ってる! っていう男の子でしたもんね。これは少女漫画で描かれる男の子だから、母性をくすぐられて、可愛く見えるのであって、逆に女の子がこれをやってしまったら、女性読者からは好かれにくい。
あと、男の子を主人公にするなら、女の子を個性的にすることを気をつけていました。
ヒロインのつかさは、普通の大人しい恋する女の子ってわけじゃなく、男っぽくて、気が強い女の子でしたね。

キャラ作りのビジュアルで気をつけていること

では、次にキャラ作りのビジュアルで気をつけていることはありますか?
ヒロインは、可愛く描くことは気をつけてます。とにかく目が大事。
目を可愛く。あとは、イキイキと描くことですね。
女の子は基本的に柔らかく、華奢に。
男の子を描くときは、女の子とは別の生き物だと思って、細くてもとにかく男の子っぽく! 骨格を意識して!
男女間の体格の差があまりない投稿作品をよく見かけますが、そこの差は大事ですよね。
あと、ビジュアル的に迷った時は、実際の人間を見ます。
テレビでもネットでもいいので、知らない人の画像を見たりして、イメージを膨らませます。
プロのみなさんのお話を聞いていると、本当に漫画って一見は二次元を描いているように見えて、すごく現実からヒントを得て描いてるんだとつくづく思います。
全部、作者の頭から生み出しているように見えて、たくさんのヒントを現実から貰っているんですよね。そうでないと地に足のついたものにならないですよね。

印象に残っている担当からのアドバイス

では、これまでに担当さんから言われたアドバイスで印象に残っていることは?
私は別マでデビューだったので、16Pでデビューだったんですね。
その後、32Pの読み切りのネームを描いたんですが16Pをただ32Pに延ばしたような話を描いたら担当さんから「これは内容が薄いよ。16Pが30分のテレビドラマだとしたら、32Pは1時間ドラマくらいの内容がないといけないんだよ」と言われました。
なるほど~と納得しました。もっと色んなエピソードがないといけないんだなと。
たしかにその通りですね。ただページを増やしただけでは間延びします。
では、具体的に32Pを描くにはどうしたら良いのでしょうか?
キャラが抱えている事情を掘り下げたり?
それもありますが、小道具ですかね。32Pなら、キーワードを3つくらい決めるんです。
その数が変わってきます。
16Pなら1つでもいいけど、32Pなら3くらいのキーになるモノを考えます。
たとえば、手紙とか指輪、時間、趣味、好きなもの、言葉とかでも良い。
クセとかなら、これでバレちゃってピンチになるとか。
そういったものを3つくらい書き出して、ブレないようにストーリーに絡めるんです。
なるほど。小道具というか、キーワードなのですね。
そういえば斉藤さんの作品の『誓いの言葉』では、おにぎり、指輪、誓いの言葉がキーワードとも言えますね。
あの作品は、まさにそういう作りですね…! 
大変、参考になりました。32Pを描いていて「内容が薄い」と思った投稿者の方は、ぜひ試してみてください。
斉藤先生、ありがとうございました。

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