まんが家インタビュー

Cookie10周年記念企画クッキーまんが家インタビュー

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2010年Cookie4月号掲載志村志保子先生

『グッドモーニング・キス』スタートの理由

――『グッドモーニング・コール』(以下『コール』)の続編になる『グッドモーニング・キス』(以下『キス』)を描こうと思ったのは、どういう理由だったのですか?

『りぼん』で約5年『コール』を連載していたんですが、気がつくと『りぼん』では、長いほうの連載になっていたんです。当時、編集部から「終わってください」って言われる前に、終わらせておきたいという変なプライドがあって、自分から「もう終わります」と宣言してしまったんですよね。

――そうだったんですか。

連載終了して2年くらい経ってから、当時いただいたファンレターを読み返してみると、終わるのを惜しんでくれる声がたくさんあって。「読みたい」と言ってくれる人がいるのに、終わらせてしまったことが申し訳ない気持ちに…。それで『コール』をもう一度描きたいなと思ったら、菜緒と上原くんの新しいエピソードがどんどん出てきたんです。

――ファンレターを読み返すまでは、『コール』のことを思い出すことはなかったんですか?

もう終わったものだから、しかたないなと思っていて。かなり長く描いていたので、もっと違うキャラクターを描きたいという気持ちも強かったので。でも、ほかの作品やキャラクターを描いてみて『コール』の世界観が自分に合っていたのを実感しました。

『グッドモーニング・コール』について

――『コール』をスタートさせるときから「この連載は、今までと違う連載になる」という予感があったんですか?

特にはなかったですね。ただ、『コール』をはじめる半年くらい前から担当さんが変わったんです。『コール』の最初のころに、菜緒と上原くんをケンカさせて、一歩気持ちを近づけるような展開を描こうとしたんですけど、どれだけ展開を考えても、2人がケンカする流れにならなくて(笑)! というのも、菜緒がケンカをふっかけても、上原くんはそれに大して怒ったりしない性格なんですよね。それを担当さんに相談したら「キャラクターとして無理があるなら、ケンカさせなくていい」って。ストーリーを盛り上げるより、自分の描きやすいように描いてほしいって言われたんですよ。実際そうしてみたら、キャラも立って、話も転がりだして、作風が固まっていったんです。

――確かに上原くんは菜緒の挑発に乗らなそうですね(笑)。でも、ケンカはしなくても2人の仲は、確実に深まっていったような気がします。

考えてみたら、人と人が本気のケンカをすることってそんなにないんですよね。私自身したことないし(笑)。ただ、当時のまんがは激しい展開のものが多かったので、それまでは無理してそういうのを描かなきゃいけないと思っていたんです。初めて描きたいように描いたのが『コール』でした。

――『コール』から『キス』になって、描く上で変わったことはありますか?

連載誌が『クッキー』に移ったことで、菜緒と上原くん以外のサブキャラをメインに描いてもよくなったことかな。『キス』になってから、菜緒と上原くんが平和なときは、ほかのキャラのことを描いたりしています。2人にいつも問題が起きているみたいになるのも不自然ですもんね(笑)。

『グッドモーニング・キス』の今後

――『キス』で2人の結婚を軸にストーリーを進めているのは、何か狙いが?

『キス』を始めるときに、上原くんと菜緒を学生結婚させたいと思ったんですよ。中学時代で同棲はめずらしかったですけど、大学生になって同棲するのって、よくあることじゃないですか? だったら、学生なのに結婚しちゃったほうが、まんがとして"引き"になるかなって。結局、大学生の間に結婚しなかったですけど(笑)。まさか、就職して遠距離になるとは…。

――高須賀さんにとっても、予想外の展開なんですね(笑)。

そうなんです。こうなっちゃうと、結婚した時点で終わると思ってる人もいるでしょうけど、私としてはそのつもりはないんです。この2人が別れないっていうのは、私もわかってるし、読んでる人も知ってると思うんです。だって、今までどれだけ当て馬キャラを出しても、ハラハラするような展開にならなかったし(笑)。だったら、今後どのタイミングで結婚しても同じかなと思って。

――菜緒と上原くんが、どのタイミングで結婚したり、どんな家庭を築いたりという展開は考えているんですか?

最初から決めておいて、そのつもりで描いていると、絶対読者にバレるし、おもしろいことが起きないと思うんです。今後を決めないほうが意外な方向に進んでおもしろくなる。だから、今からあまり考えすぎないようにしています。2人の結婚や出産も、そこまで描いていけば、何か見えてくるんじゃないかと。私自身や身近で起きることで、今とは全く違う考え方になっているかもしれないし、そのとき自分が感じたことを描くのがいいと思うんです。そうでないと、キャラクターのセリフに説得力がなくなってしまうので。

――こんなエピソードで終わろうというゴールは見えていますか?

いや、それも全然(笑)。『こち亀』くらい、ずっと描いていけたらいいなと思っているので(笑)。時々ファンレターで「菜緒の一生を描いてください」っていただくんですけど、私もそのつもりです! 私、多田かおる先生の『イタズラなKiss』が大好きで。何があっても、主人公の琴子と入江くんカップルは別れなくて、最初は学生だったのが、就職して、結婚して、子供ができて…と成長していくけど変わらない2人のおもしろいやりとりをずっと読んでいたくなるまんがなんです。私も、そういう作品を目指したいと思っています。

まんが家としての思い

――高須賀先生がまんがを描く上で、大切にしていることは、どんなことですか?

読みやすさですね。私のまんがは、読みやすさが命だと思っているので。オーソドックスなことを描いているので、飽きずに最後まで、ずっと読んでもらえるような見せ方で勝負しなきゃ!という思いもあります。

――すっと読めるけど、途中で飽きてしまわないものを描くということですね。

そうですね。読んでいて退屈になるのもいけないし、途中で「うん? 何それ!?」とひっかかって現実に戻ってしまうのもよくないので。とにかく、すーっと最後まで読んでもらえるようなストーリーと見せ方を考えるのが大変で…。読んでると、簡単なまんがに見えるんですけどね(笑)。

――簡単に見えるものほど、実は難しいんですよね。

特に絵はバランスが難しいですよね。あまり描きこんだり、ごちゃごちゃしないようにしているけど、画面が白っぽくなりすぎてもダメなので。実は結構時間かけて描いてるんですよ(笑)!でも、読む人には「これ描くの大変だったんだろうな」なんて考えず、楽しく読んでもらえたらうれしいです。それが、私の売りだと思うので。

おわり

構成/古川はる香

プロフィール
高須賀由枝先生

5月2日生まれ。愛媛県出身。
18歳のときに『Revolution』で『りぼん』よりデビュー。'97年より『りぼん』で執筆し大人気を博した『グッドモーニング・コール』の続編となる『グッドモーニング・キス』を連載中。

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