クッキーで描くきっかけ
――志村先生がクッキーで描くようになったきっかけから伺えますか?
もともとは、クッキーの前にあった『ぶ~け』という雑誌でデビューして。当時の担当の方が、創刊と同時にクッキー編集部へ移ったので、 私もクッキーで描くようになったんです。
――創刊当時のクッキーの印象は、いかがでしたか?
それまでのまんが雑誌とは違って「新しい!」という印象でした。「時代に合っている雑誌だな」とも思いましたね。
ストーリーのつくりかた
――デビュー当時から短編作品をたくさん描かれていますよね。
いつも、どのようにストーリーを考えているんでしょう?
私の場合、ノートに気になった事や、ふと思いついたキーワードを書きためておくんです。話を考えるときには、それを見返して「これとこれがつながるかも?」と、キーワードを組み合わせて、ストーリーを考えていきます。
――描きたいキャラクターやシーンを思いついて……という形ではないんですね。
そうですね。私はキーワードから、話を想像していく方が考えやすくて。うまく想像が膨らむキーワードの組み合わせがあるんですよ。
――『女の子の食卓』もそうですが、志村先生の作品は、切なさのあるストーリーが多いですよね。
単純に、自分の好きなテイストが、切なさのあるものなんだと思います。ハッピーで楽しいムードのストーリーを描くのが、私にとってはすごく難しいので。描きやすい方向を探していたら、ちょっと泣ける物語だったんです。
『女の子の食卓』について
――食べ物をテーマにした『女の子の食卓』が生まれたのは、志村先生の発想なんでしょうか?
もともとは、編集部の方に「曲をテーマにしたオムニバスか、食べ物をテーマにしたオムニバスをやってみませんか?」と提案していただいたんです。そのときに選んだのが、食べ物のほうのオムニバスだったんですよね。
――食べ物を選んだのは、志村先生が「食」に興味があったからですか?
食べることや食べ物まんがは好きだったんですが、うんちくを語れるほど詳しいというわけでもなくて…。「食」について、いろいろ調べるようになったのは『女の子の食卓』の連載が決まってからですね。
――そうだったんですか。ちなみに、お好きな食べ物まんがは?
一番好きな食べ物まんがは『孤独のグルメ』ですね。ほかにも、男性向け・女性向け問わず、いろいろ読んでます。
――毎回のストーリーは“MENU”として出てくる食べ物から思いつくんでしょうか?
それはいろいろですね。ストーリーが出来上がっていて、それに合う食べ物を探す事もあるし、食べ物を先に選んで、食べ物にまつわるエピソードからストーリーを膨らませることも。今まで描いた中だと、食べ物を決めてからストーリーを考えたものが多いですね。ストーリーと食べ物がうまく噛み合って、初めて完成する作品なので、途中まで組み立てたけど使わなかったストーリーや食べ物も、今までにたくさんあります。毎回、完成までには結構時間がかかりますね。
――主人公に思春期の女の子が多いのは、タイトルに“女の子”という言葉が入っているからですか?
主人公は女性というしばりはありますが、年齢までは意識していないですね。でも描くのが好きなのは、中学生くらいのキャラクターかも。中学生って、まだ子供な面も大人っぽい面も、両方持っているから、いろんな感情が描けるんですよね。
『女の子の食卓』の“MENU”
――連載開始から今まで、本当にたくさんの食べ物が出てきましたよね。
そうですね。最初の頃は、自分が好きな食べ物を順番に“MENU”に選んでいたんですが、しばらくしたら足りなくなってしまったので(笑)、レシピ本やテレビなど、いろいろなところから情報を探して、気になった料理やエピソードはノートに書きためています。
――なかには、志村先生が食べたことのないものもあるんですか?
いいえ! まんがに出てくる食べ物は、どれも描く前に一度作って食べていますね。自分がおいしさをわかっていないものを、登場人物に「おいしい!」と言わせるのは、ちょっと気が引けるので、おいしさを理解できないものは、レシピを研究して、何度も試食することもあります。
クッキーに対する思い
――志村先生が、今後のクッキーに期待するのは、どのようなことですか?
ベテランの先生から、新人の方まで、作家陣も幅が広いですし、載っている作品もテイストがいろいろで、本当に懐の深い雑誌だと思います。その懐の深さは、そのままでいてほしいですね。
――「こんな作品が読みたい!」という希望はありますか?
私としては、新人の方の新しいセンスにドキドキするのが楽しいので、魅力的な新人さんが出てきてくれるのを期待しています。 キャリア問わず「こんなの私には描けない!」と思えるような作品に出会えると、嬉しくなってしまうんです。
――志村先生自身、まんがを読むのはお好きなんですね。
そうですね。今も『舞姫 テレプシコーラ』とか『ヒストリエ』とかいろいろ読んでます。何度も読み返してしまうバイブル的作品は『行け!稲中卓球部』なんですが(笑)。
――『稲中』! 意外すぎます!! 志村先生も実はギャグ作品を描いてみたいとか!?
いえいえ、そんなことは(笑)。私としては「こんな作品が描きたい!」という強い思いがあるわけではないので、その時々、自分に描けるものを描いていければと思います。
おわり
構成/古川はる香