『クッキー』登場のきっかけ
――水沢先生の『クッキー』初登場は「神様のオルゴール」ですよね?
はい。クッキーの創刊当時は、『りぼん』で描いていて。できあがった『クッキー』を見て、「すごくステキな雑誌だけど、大人っぽい絵柄で大人っぽい話を描くまんが家さんばかりだから、自分のいる場所ではないのかな」と考えていたんです。
――それがどういうきっかけで『クッキー』でも描くことになったんですか?
クッキー編集部の方から声をかけていただいたのがきっかけですね。そこで以前から暖めていた“学生結婚”や“できちゃった結婚”というテーマも『クッキー』なら描けるかと思って、編集部の方にお話ししてみたんです。常に新しいことにチャレンジしたい気持ちがあるので、今まで『りぼん』で描いていたものとは違った世代向けの作品が描けることにわくわくしました。
――そのころ、大人向けの作品を描きたい気持ちがあったんでしょうか?
特にそのころというわけではなく、いろいろな世代向けのまんがを描くのは楽しいと思うんです。でも、保守的なので新しいことをやりたいと思ってはいてもなかなか踏み出せなくて。『クッキー』にはいい機会を与えていただいて感謝しています。
「神様とオルゴール」の思い出
――「神様のオルゴール」は大学生の2人が妊娠をきっかけに結婚し、子育てをするという、なかなか衝撃的なお話ですね。
そうですね。主人公・柚実と結婚する航太が全く頼りにならないどうしようもない男で(笑)。でも、ダメダメな航太に“あーもー、何やってるのー!?”ってツッコミを入れながら描くのは結構楽しかったです。
――描く上でこだわったのはどのようなことですか?
毎回テーマと絡めて、歌と食べ物を出すことにしていました。しかも最終回はそれまで出てきた食べ物すべてを少しずつ網羅してるんですよ。そういうちょっとした仕掛けをつくるのが大好きなんです(笑)。
――連載当時の思い出は何かありますか?
連載中盤あたりは『りぼんオリジナル』の連載と1か月おきに交互でやらせていただいていたんです。『りぼん』では「ファーストキスしちゃうかも!? ドキドキ!!」みたいなかわいい悩みを描いているのに、『クッキー』では家計や育児のことで柚実と航太がけんかしていて(笑)。そのギャップがおもしろかったですね。
「キラキラ100%」について
――「キラキラ100%」はどういったことから思いついたお話なんですか?
そのころ放送していた、若い女性が美容整形で変身するテレビ番組がきっかけです。整形後の女性たちがすごくうれしそうな顔をしているのを見て、表情や雰囲気だけでも人はかわいくなれるんじゃないかと感じたんです。そこから自分はダメだと思っている女の子が、かわいくなるきっかけをもらって変わっていく話を思いつきました。
――ダイエット、手料理など毎回みくがぶつかるテーマはその都度考えているんでしょうか?
テーマについては、高校生の女の子が悩みそうなことを初期にあらかじめ書き出しておいたんです。どのテーマの時も、みくが必ず何かしら失敗して落ち込むんですが、この失敗を考えるのがなかなか楽しくて(笑)。「手料理」のテーマで、渋谷くんと男友達のために作ったハンバーグに玉ねぎを入れすぎてボロボロになってしまうのは、私の実話なんです(笑)
――そうだったんですか! みくのキャラ設定は"ドジな子"と決めていたんですか?
「私なんか」「どうせ」をよく言う子にしようと思って。今はかなり成長しましたけど、すぐにいじける子というのが最初に考えた設定ですね。今までやってきた連載作品だと主人公はがんばり屋や明るい子ばかりだったので、主人公としてみくみたいな子を描くのが初めてだったんですよ。すごく新鮮で楽しかったです。
最終回を迎えるにあたって
――「キラキラ100%」もいよいよ最終回ですね!
今は寂しさよりも、「ここまで来たからにはちゃんとやりきらなくては!」という気持ちです。みくや渋谷たちをいい場所に収めてあげたいですから。最終回を描き終えてしばらくすると寂しくなるんでしょうね。
――今まで描き上げた連載作品は、水沢先生の中でどういった存在になっていますか?
自分の中に抱えていて、時々「あの子たちどうしてるかな?」なんて考えたりしますけど、もうどっぷりと関わることはないですからね。「この子たちをもう動かすことはないんだな」と思うと、やはり寂しい気持ちになります。
――最終回以降のストーリーを想像してみたりもしますか?
それは考えないですね。読んでくださった方たちがそれぞれに続きを考えていて、そのすべてが正解なんだと思います。
――「キラキラ100%」も7年にわたる長期連載でしたが、長くまんがを描かれていて「まんがを描くのに飽きた!」なんてことはないですか?
〆切直前のころには「もう飽きた~」なんて思ったりもするのですが、終わるとすぐに忘れます(笑)。机に向かってまんがを描いている状態が一番落ち着くし、一番自分らしい気がします。
『クッキー』10周年に寄せて
――『クッキー』が10周年を迎えた感想を聞かせてください。
創刊した年から描かせていただいていますが、「もう10周年」と「まだ10周年」という気持ち両方ですね。最初は少しよそよそしいというか、お客さんの気分だったんですけど、いつの間にかホームグラウンドにさせていただいて。今は居心地のいい場所になりました。
――今後の『クッキー』に期待されることは?
自由な発想でいろいろなことが描ける自由な雑誌であるといいですね。今でも十分そういう雑誌だと思いますけれど。渋谷っぽく言うと、「今のままの君が好きだよ」という感じでしょうか(笑)。
おわり
構成/古川はる香
プロフィール
水沢めぐみ先生
7月3日生まれ。79年、『りぼん』より「心にそっとささやいて」でデビュー。代表作に「ポニーテール白書」「姫ちゃんのリボン」など。『クッキー』にて「キラキラ100%」を連載。
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「神様のオルゴール」3巻
「『神様のオルゴール』は病院で讃美歌が聞こえてくるシーンからストーリーを考えていったんです。初回と最終回に讃美歌が出てきて、うまくつなげることができたので、自分としては満足です」